ご挨拶
この度、由縁あって二十年ぶりに印章研究家に復帰を決意致しました。
最近、パソコンで姓名を打ち込み紙幣を投入すれば、人の手を掛けないドリル彫りの印が出てくるという自動販売機があります。またあるネット販売の業者が取材に答えて、市井の判屋さんの年間売上位は半日か一日で売りますといいます。これはパソコンの文字を拾いドリルの自動彫刻機で二十分位で彫ったものでしょう。
印とは断じてそのような軽薄なものではありません。印とは熟考重ねた字法・章法・刀法によって完成するものであります。
また何顆あっても変化のある創作文字で比例均衡の美を表現したものが印章です。
一人でも多くの方に、正しい印章についての知識を持って頂きたいとの想いから、このサイト「印章の美学」を制作致しました。
縁あって当サイトに来られた方におかれましては、くれぐれも迷信印や駄印を持たれる事のないよう願うばかりであります。
印章研究家 生田 陽介
印章と「美」
印章の「吉印・凶印」とは、印面の文字「印影」が調和がとれているか否かに全てが掛かっています。吉印とは文字が、正側俯仰に基づいて「文字と文字」「文字と輪郭」が相寄り、相助けられ、感情と意志を備えた印文字を言います。
印には章法があり、印面の字の多少、文字の朱・白、文字の粗密の和、字と字が相依って情あり、即ち、比例均衡の美であります。印ほど印影の比例均衡の美のあるものはありません。
私達が美術史から学ぶ「法隆寺五重の塔」の比例均衡の美しさや安定感、「唐招提寺のエンタシのある柱」が漂わせる調和美も、「薬師寺三重塔の均整の取れた裳階」の美しさ、これら総ての美しさを包蔵した、「美」を表現しているのが印章の印影ではないでしょうか。
入魂の名作には、刻者の執念にも似てすさまじいまでの迫力が介在し、ここに始めて印章の美学が生ずるのであります。