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印章に対する信念 藤本胤峯

仏法の法語に「入我我入」という名言があります。これに仏を意味すると「仏が我に入り我が仏に入る」で法悦の極みといいます。

印章の極意は篆源(篆書体)を良く知って、千変万化し、良き文字の配分を得てここに初めて名印を生ずるものであります。

即ち「篆源我に入り、我篆源に入る」。ここで配分の妙を生ずる。そこで印刀を執る。「気迫我に入り、我印刀下の三味境に入る」。これで佳き美を備えた印章が完成するものであります。

これは極意ではなく良識であり、篆源を知らずして、楷書を折り曲げた篆書風の文字に品位などあるはずはありません。

篆源を理解して、一般に判りやすくするのは容易ではないが、この布置配分が完成出来たとき、帝王の文字といわれる篆書体は、その真の気品ある美を必ず表現します。

藤本 胤峯

藤本胤峯の印章考

はんやの家に生まれ家業継承するに当たって、他事は知らずとも印章に関しては何でも一応知るべしとの強い信念をもち、その想いからか、毎日、午前中は大阪の古本屋街の古書店を廻り、奏漢の篆書に関する本の買い漁りで過ごし、午後は印刻の楽しさを満喫しながら勉強した。

特に諸々の法則を考え加えて字入配文にはその興趣の限りを尽くした。そしてはんやの誇りを身につけた。

私は常に「ハンヤ」は技術と信用と見識を兼ね備えた聖職に在る実に恵まれた素晴らしい王者の仕事であると自負してきた。

対人信用より対印信用の現在社会は印章なくしてあらゆる機構は在り得ない。印章は人格を表現し、その優劣はその人の盛衰をも左右する、まさに人生の宝器である。その宝器を謹作するハンやのはその意義を深く考え誇りをもってほしい。

藤本 胤峯

藤本胤峯の略歴



・明治43年(1910年)大阪市出身。
・夙に印章学並びに刻法を学び、十九歳にして一家を成した。
・久しい間或は篆刻を、或は実用印章に精魂を傾け、暫くして悪印迷信印の一掃を期して今日に至る。
・著書は「印章教本」「運命と印章」を初め数著。